ベルリンのイースター(Ostern)
ベルリンで3年間暮らしてきた私ですが、皆さんに一番お伝えしたいことはイースターについてです。
名前は知っていても、未だ日本では馴染みのないイベントではないでしょうか。
しかしベルリンでは、クリスマスやハロウィンよりも大切な催しです。
これはヨーロッパ、北欧で1年間のうち半分以上は暗がりの中で過ごしてみないと分からないかもしれません。
友達も親戚も「いいわね。ヨーロッパに行けて!」と羨ましがりますが……
ベルリンの冬は寒い!
実際に暮らしてみてください。日本で思うヨーロッパ、北欧は私から見れば全然違います。
確かに、春から夏にかけては最高です。街並みは美しいし、木々の緑も心地よい風も日本より良いです。
でも秋になり紅葉らしきものが終わると、ある日を境に一気に暗闇の世界に入るのです。
気温は一日に15度以上も下がります。朝は半袖でも昼過ぎは長袖、さらに夕方にはコートがいるくらい気温が下がるのです。
ベルリンでの初めての冬を迎えた時は本当に驚きました。もう、寒い!すごく寒い!
ビールなんかベランダに積んでおいたら全部、寒さで凍ってバキバキに散らばってしまいます。
わずか10分足らずの駅までの道を歩いていると足は凍りついてしまいます。
日本の靴用のホッカイロなしには近くのコンビニにも行けません。
洗濯物も外には干せませんし(凍ってしまうから)勿論ふとんも干せません。
月みたいな太陽
冬が近づく毎に太陽の出る時間が短くなり、春や夏の太陽と同じものとはとても思えないくらいの弱々しい光の太陽になってしまうのです。
まるで温泉卵の黄身が白身で包まれた感じの色をした太陽がほんの2、3時間、やっと顔を出したと思ったら、午後3時くらいには日没を迎え夜になってしまうのです。
あんなにも弱々しい光がまさか太陽であるとは思わず、
ベルリンでできたドイツ人の友達に、あれMonat?(月)と訊いてしまいました。
いやいやSonne(太陽)だよ、と言われた時には俄かに信じることはできませんでした。
ショックでした。月だと思った丸い光が太陽だったとは?
ヨーロッパの半年は暗い穴蔵の中で生活するようなものです。
気持ちも落ち込みます。体調も悪くなります。
道で見かけるホームレスさんたちの多くは腰が曲がって肩がうずくまり今にも死にそうに見えます。
太陽の光はビタミンDや幸福ビタミンと呼ばれるセロトニンも作ってくれます。
半年間はこの恩恵にあずかれなくなるのです。ヨーロッパにうつ病や統合失調症の人が多いのも頷けます。有名なフロイトも統合失調症でしたよね。頷けます。
さらに、治安の悪いベルリンでは暗い時間に外出はできません。ですので買い物は、太陽の出ている午後1時から2時の間に限定されます。
もっと辛いことはあるのですが、この辺にします。
厳しい冬と、喜びの春
私がここまで長々と書いた理由は、冬の厳しさを語らずしてヨーロッパの春は語れないからです。
ヨーロッパの人たちがいかに太陽を待ち望んでいるか。春になって日の光が戻って来ると、日本人には想像もできないほどの喜びを胸いっぱいに感じるのです。
春になって、ドイツ人の友達に誘われてシャルロッテンブルク宮殿の公園へピクニックに出かけました。
暖かい風が吹き、小鳥がさえずり、リスが遊びまわり、太陽の光に包まれながら、私は春の訪れを心から味わいました。
半年の不自由な穴蔵生活からの脱却です。やっとここまで生き延びた!と思えました。
そんな、人々の溢れる喜びを表現しているのが、イースターというお祭りなのです。